fellows
 

 窓の外には果てしない宇宙。
 灯りもつけず、男は一人外を見ていた。
 遠くから微かに、パーティの喧騒が聞こえてくる。異星からの軍勢を撃退した、ささやかな戦勝祝いと
皆の慰安を兼ねたパーティだ。
 部隊に名を連ねる者としては自分もその場にいるべきなのだろうが、胸の中の何かが頑なにそれを拒んでいる。
晴れがましい場も苦手なので、この展望室に佇んでいた。
 気配を感じ、ふと振り返る。
 女が立っていた。ターコイズブルーの髪の、背の高い女だ。肩の開いた黒いドレスがよく似合っている。
 「邪魔したか」
 いつもと同じ、素っ気ない口調だ。同じように素っ気なく、男は答えた。
 「いや」
女の紅を引いた唇がニッと半月の形にゆがんで、蟲惑的な表情を作り出す。このような笑みを見せる女は、
彼にとって嫌悪の対象だったが、彼女に関してはそう悪い印象を持っていない。
コツリ、とヒールの音を立てて、彼女が歩み寄る。手にしたグラスには、マティーニだろうか。
 「飲まないのか?地上の酒もなかなか旨い」
 「……今はそういう気分ではない」
笑みを消さないまま、女は男の後ろに立った。
 「何の用だ」
 去ろうとしない女を振り向くことなく、問う。艶やかな唇が開いた。
 「一言、礼を言いに来た……」
 「礼?」
 「ああ。あの時、貴公の援護が無かったら、今ごろは死んでいたよ…ガトー殿」
 「……随分と古い話を持ち出す。当然の事だ」
 アクシズの会戦での事。彼女の機体は大きなダメージを喰らい、その上彼女が宙間戦闘に不慣れな事もあって、
敵から集中攻撃を受けていた。そこへ彼が割って入り、窮地を脱したのだ。
 「できれば剣で返したかったのだがな…生憎、貴公が強すぎた」
そう言って、クックッと女が笑う。さっぱりとしたその表情に、男は少なからず好感を覚えた。
 グラスの中身を飲み干すと、女は背を向けた。 
 「……ショウや竜馬が心配していた。祝いの席だ。顔ぐらい出すのが礼儀だと思うぞ」
 「この先・・・どうされるつもりだ?」
低い声に女が振り向いた。自分に問い掛けた男はやはり外を見ている。その背を一瞥すると、
女は壁に身をもたれさせた。何かの低い振動音が微かに伝わってくる。
 「この先、とは?」
 「シーラ女王以下、バイストン・ウェルの方々はいずれ帰られると聞いている……その後だ」
 「その後、か……」
ガラス越しに女の視線が宙を移ろうのを、男は見ていた。
 「私は、ラウの国に仕官しようと思っている。エレ女王にはラ・ギアスで世話になったからな。
その恩を返したい」
 「そうか……」
 ラウの若き女王の名は彼も知っていた。異世界ラ・ギアスで一度だけ、その姿を見ている。
聡明で、心のやさしい少女だと聞いていた。
 「貴公はどうするつもりだ?」
 男はしばらく黙っていた。女の視線が、背中に焼きつくのを感じた。
 「…私は元々DCの人間だ。だがそのDCも今はない……」
 「フ、なるほど……私と似ているな」
女が呟く。彼女も元は敵軍の将だった事を、男は今さらのように思い返す。
 「おかしな世界に飛ばされ、訳もわからぬまま戦って……本当に酷い目にあった。だが…一つだけ、はっきりした事がある。
それは、どこにいても私がバイストン・ウェルの戦士だということだ。…ドレイクの、ではなくな」
 「……」
 「我らバイストン・ウェルの者と、貴公たち地上人だけでなく……ダバやマリアのような異星の人間まで、
共に戦い、共に笑うことができる……。本当におかしな世界だよ、ここは」
 二人の視線がガラスの中で、絡む。先に眼を外したのは女だった。
 「つまらぬ事を言ったな……どうも飲みすぎたようだ」
 「いや」
ガラスから眼を離さず男が答える。と、その唇の端に笑みが浮かんだ。
 「おかしな世界か……確かにな」
 彼女の言う『おかしな世界』は、今はこの部隊だけの事だ。しかし、徐々にこれから変わってゆく。
――そう信じても、いいのかもしれない。
 男はガラスに背を向けた。真っ直ぐ自分を見つめる、女戦士がそこにいた。
 「私はここへ来て後悔はしていない…。貴公のような戦士と出会えてな」
 「私もだ……地上人の戦士殿」
 

 数日後。「世話になった」と言い残し、アナベル=ガトー少佐は船を下りた。

 それからまたしばらく後。バイストン・ウェルから来た者はすべて帰還し、ガラリア=ニャムヒーは宣言通り、
ラウの国に騎士として召し抱えられた。
 一部の歴史書には、その傍らに銀髪の騎士の姿があったと書かれているが、真実は定かではない。

fin


 あとがき、そして、ごめんなさい。

 fellowsとは、「仲間」とか「境遇の似ている人」という意味です。
 で、寝返りキャラ同士のガラリアさんとガトー様にご登場願いました。
 ていうか、管理人が二人とも好きなのと、ガトー様とまともに相対できる女性は(味方では)
 ガラリアさんの他にいない!って思ったからです(笑)
 共に戦士として名を成し、またいろいろしがらみを背負ってたりもしそうなこの二人が、
 杯を交わしながらオトナの雰囲気でしっぽりかつさらりと、を見たくて書いたんですが・・・(TT)
 オトナはムズカシイです・・・ハイ(泪)

 ラストは99%で赤の他人です。書いた本人も信じたくなくて、ぼかしてあります(笑)
 これで完結の第4次ベースだからできるネタ、ということで大目に見てください(爆)
                            (2001年6月 UP)


 ずっとガラリアさんの髪の色、緑だと思ってました;;どっちかっていうと青ですよね;
 うう、はずかし。ガラリアさん、好きなのに;
 そのほかにも少し修正入れてます。久しぶりに読み返してみて、「…」の多い二人だなと思いました(苦笑
 そして、いまだにオトナの雰囲気はよく分かりません(笑)
                            (2009年4月 再UP)

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